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平安ロマンは生きているか?六郷神社今昔物語

日本の歴史は文化の深さや考古学的発掘によりその長さを実証しているが、約1000年に及ぶその歴史を体感できる場所が、大田区に存在する。
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スティッキーズ内 六郷神社リンク
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六郷神社は約1000年に及び大田区を見守り続けている日本の古くも荘厳な神社の一つだ。
<六郷神社入口写真(夕暮れ)>
六郷八幡宮と源氏
六郷神社の由緒は社伝を紐解くと天喜5年(1057年)に遡る。源頼義、源義家ら父子が、この場所にある大杉の梢高くに源氏の白旗をかかげ軍勢をつのり、石清水八幡宮に武運長久を祈願した。
すると軍の士気が大いに高まり、 奥州十二年合戦とも呼ばれる「前九年の役」で勝利したため、凱旋後に石清水八幡宮の分霊を勧請し八幡宮を創建したとされる。このことから江戸時代には「六郷八幡宮」と呼ばれている。
この合戦の名称には諸説あり、源頼義が奥州十二年合戦に本格介入した年を基準として戦乱を9年間と計算したという説や、が奥州十二年合戦を後三年の役(1083年-1087年)と合わせた名称と誤解され、12年から3年を引き前段について「前九年の役」と呼ぶようになったなどの説があるが、この合戦自体の年数計算が諸説あるために書籍により合戦名が幅広く使用されている。
現在では前九年の役と呼ばれることが多い。
文治5年(1189年)源頼朝も奥州藤原氏との合戦時、祖先にならい、白旗を立てて戦いでの勝利を祈願したので、建久2年(1191年)社殿を造営するよう梶原景時に命じた。 社宝となっている雌獅子頭(めじしがしら)と境内に残る浄水石は、頼朝が奉献したものといわれており、神門前の太鼓橋は、景時が寄進したものといわれている。
このような文献や社宝により六郷神社の創設には源氏が深く関わっていることが読み解けるのだ。
神門前の太鼓橋
家康の発給した御朱印状の由縁と現代に至るまで。
天正19年(1591年)徳川家康は、寺社の所領として確定させる神領として十八石を寄進する公的文書である朱印状を発給した。
さらに慶長5年(1600年)家康は神社近傍を流れる六郷川に架橋(六郷大橋)を命じる。
竣工を祈る願文を奉り、この神社の神輿によって渡初式を行ったと伝えられている。
このように徳川家との縁が深いためか、神紋として八幡宮の巴紋とあわせ三つ葉葵紋を用いている由縁になっている。
江戸時代には、東海道をへだて西側の宝朱院(御幡山建長寺)が別当寺となっていたが、明治維新の倒幕運動により、これが廃されることとなった。
明治5年(1872)東京府郷社に列格し、明治9年より六郷神社と称して今日に至っている。
六郷八幡宮の神々と六郷神社の神
六郷神社は、応神天皇(誉陀和気命・ほんだわけのみこと)を祀る八幡となっている。
八幡は、日本でもっとも多くまつられている神社で、その数は全国で4万社を超える神社の一つだ。
一般に八幡の祭神は、応神天皇(おうじんてんのう)、神功皇后(じんぐうこうごう)、 比売大神(ひめおおかみ)の三柱の神々であり、 六郷神社でも昔はこの三神を祀っていたと言われているが、時期不明の曳船祭で、一座の神輿が上総(かずさ)の国に流されてしまい、もう一座の神輿はことのほかの荒神で、しばしば祟りを受けることがあったと言われ土中に埋めてしまった、と江戸時代より書物などで伝えられている。
関東三大船祭りの一つといわれた六郷神社の曳船祭。
江戸時代から六郷川にくりひろげられた、じつに勇壮華麗の一大凱旋として賑わいを魅せていた。
羽田、大師河原が氏子であった関係から、宮神輿を御座船に乗せ、四艘の足船が長さ150尺の大綱で曳く後から、各町会の迎え船と送り船が、囃子の音とともに勇ましくのぼり旗を風になびかせて無数の観覧船と共に川を下っていったという。
現在の本殿は、享保4年(1719年)に建てられたもので、三柱の神様を祀っている建築様式になっており、応神天皇一柱を祀るようになったのは、一座の神輿が流され、もう一座の神輿が地中に埋められて以後のことではないかと言われている。
八幡は、源氏が氏神にしてから武神として有名になったが、 古代大陸文化をとりいれてわが日本の発展を築いた偉大な文化の神、殖産の神とも讃えられている。
1000年の時をこえ、現代にのこる六郷神社
1000年というあまりにも途方もない時間をこの神社は歩んできた、ときに合戦の戦勝祈願として、またさらには文化発展の祈願や新建築物の安寧祈願として、1000年の間多くの人々の願いを聞き続けている。
現代に生きる我々の中にも未だ、神社という場所は祭りや初詣など行事からもわかるように、どこか心の置き場所のようになっている。
冬の大祓を間もなくに控えた六郷神社は、もう次の1000年に向かい歩を進めているのかもしれない。